はじめての越境ECマーケティング講座
Magentoをベースとした越境ECサイトの構築をされているFLATZさんと英語WEBマーケティングサービスを提供している世界へボカンのコラボ企画で、記事を寄稿させて頂く事になりました。
世界へボカン株式会社の徳田と申します。弊社は英語に特化したWEBマーケティングサービスを提供させて頂いている少し変わった名前の会社です。私は8年ほど英語サイトのSEO、リスティング、サイト改善コンサルティングに携わらせて頂いております。
越境ECにこれから挑戦する方、構築したけど集客面で課題のある方に向けて、この場をお借りして海外WEBマーケティング、プロモーションに関するノウハウを提供していきたいと思います。
越境ECのマーケティングって何からやればよいの?
弊社にはよく、
「英語サイトを立ち上げたものの、何をしたら良いかわからない」
「SEOやリスティングを自己流でやってみたけど、上手くいかなかった」
「業者さんに依頼したけど上手くいっているのかどうかわからない」
というようなお問い合わせを頂きます。
そういった事にならない為にも、海外WEBマーケティングの経験をもとに越境ECサイトのマーケティングを行う際に抑えるべき3つのポイントをご紹介します。
既に国内向けのWEBプロモーションを実施していて、これから海外に進出していこうという担当者の方はSEOやリスティングが最初に思いつくかもしれません。
しかし、具体的な施策に入る前に、まず御社が海外向けのWEBマーケティングを実施する際に考えなければならないのは、①ターゲットの設定、②目標の設定、③競争優位性(選んで貰う理由)の整理です。
何故なら、これらが定まっていない状態のままですと、誰にリーチすれば良いかが分からない、実施しているプロモーション施策が効果的だったのか判断できないという状態に陥ってしまうからです。
1.ターゲットはどんな人でしょうか?
ターゲットは英語圏のユーザーと設定していくだけでなく、
- 国籍
- 年齢
- 性別
- 興味関心
- 属性(主婦、学生、サラリーマン)
- 普段使用しているデバイス(PC、モバイル、タブレット等)
- 悩み、課題、ニーズを抱えているユーザーなのか?
を整理してみると良いでしょう。

fig.1ターゲットの設定
英語圏のユーザーと一言でいっても、第一、第二言語で英語使用しているユーザーを合わせると全インターネット人口の49%にもなってしまいます。そうすると、日本の十倍以上のユーザー※の中から、御社の製品を求めているユーザーにリーチしなければならない事になります。
※ICT Indicators databaseの調査によると、2014年世界におけるインターネットの利用者数は、29億2千万人
また、過去の取引実績からターゲットユーザー像を組み立てる事も良い方法です。ターゲットを絞り込むのが難しいという方は、これまで貴社商品を購入してくださった海外のお客様の事を思い出してみてください。
越境ECを通して商品を販売していく為には、誰に貴社製品に届けたいのかを明確にしていく事から始めましょう。また、誰にリーチするのかがクリアになると、彼らが検索するキーワードがどういったものか考え易くなります。
2.定量的かつ売上に直結する目標の設定
お問い合わせを頂いた際に、お客様の現状と目標をお伺いすると、
「SEOで●●(特定のキーワード)で上位表示させたい!」というようなご要望を
頂く事が多いです。
しかし、これでは目標としては不十分です。何故なら、特定のキーワードで順位が伸びても売上が増えるとは限らないからです。
御社がECサイトで、まず目標値としていくべきなのは売上と成約数(いくら売り上げが必要で何件成約しなければならないか)です。これにより、目標を達成する為に必要なアクセス数が見えてきます。
例えば、
海外から月商100万円売りたいという目標があり、商材の単価が1万円だったとした時、一般的なECサイトの成約率の基準値である1%をあてはめて下記のように必要なアクセス数を導き出す事が可能です。

fig2.成約数とアクセス数
これで、売上目標を達成する為の、
- 目標成約数
- 必要アクセス数
が明確になります。
次に
・どういった集客施策を行っていくべきか
・成約率を上げる為にどういったサイト改善施策を行っていくべきかが
考え易くなります。
3.貴社商品は何故選ばれるの? 競争優位性は明確になっていますか?
貴社の商品が競合と比べて優っている点を競争優位性と言います。海外のユーザーに購入してもらうためには競争優位性(貴社サイトから購入する理由)を明確にしてあげる必要があります。
ハーバード大学経営大学院教授のマイケル・ポーターは競争相手に打ち勝つ方法は3つのパターンに大別できると言っています。
① コストリーダーシップ戦略
② 差別化戦略
③ 集中戦略

fig3. 競争優位性 3つの基本戦略
これまで担当させて頂いた案件で具体的に分類してみると、
①コストリーダーシップ戦略
- 海外でも同様の商品が販売されているが、日本から購入した方が安い
- 良質な商品を安価で提供している。
②差別化戦略
- 日本でしか手に入らない商品を販売している
例)日本限定G-shock、日本ブランドのアパレルアイテム、包丁、漆器 - 日本で使用されていた機器だから中古でも状態が良い
例)中古自動車、中古医療機器 - 小ロットで販売可能
- カスタマーサービス、アフターフォローがしっかりしている。
- アジアへの配送が欧米の企業と比べてスピーディーに行える
③集中戦略
- フィリピンの富裕層ユーザーにターゲットを絞って商品を販売している
- 特定の地域(国)のユーザーが求めている在庫をどこよりも持っている
越境ECを行う場合、②、③の方法を打ち出す事や①②の戦略を③何処の国の誰に投下して実施するかといった組み合わせで戦略設計をしていくケースが多いです。
例)
- ザンビアにターゲットを絞って中古車を提供している為、他社よりも安価で好まれる在庫を多く販売する事が可能。
- アジアでは自社しか扱っていない建材を、地の利があり、建設ラッシュのマレーシアに販売する
- 自社×海外の有名企業とコラボレーションアイテムを開発し、海外にいる、そのブランドのファン層に向けて、コラボアイテムを販売する。
等々
御社で越境ECを通して商品を販売する場合、何が決め手となってユーザーが商品を購入するのか考えて見て下さい。ここで考えた優位性を集客時のキーワードや広告文、サイト内に盛り込むことで、選ばれ易くなります。
まとめ
このように越境ECをはじめる際に、
- ターゲットの設定
- 定量的かつ売上に直結する目標の設定
- 競争優位性の明確化
をする事で、次のプロモーション施策を効果的に行えるようになります。
はじめから、売れる市場や優位性が見えている場合ばかりではなく、リスティング広告を活用したテストマーケティングをしながら、市場を探す場合やユーザーの声を基に優位性のあるサービス、商品を開発する事もあります。
海外市場は日本と比べても格段に大きいです。しかし大きいからこそ、競合も多く、戦略が伴わなければ、御社サイトはなかなか見つけてもらえません。
だからこそ、
・誰に向けたサービスなのか
・何故、御社のサービスを利用しなければならないのか
・どういった戦略で販売していくのか
を整理し、どんなターゲットに対し【集中】して経営資源を投下していくか決める必要があります。
これから越境ECに取り組む方、悩まれている方のご参考になりますと幸いです。
世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希
イギリス留学を経て、世界へボカン株式会社の前進であるポータル・ジャパン株式会社へ入社。特に英語サイトのSEOに精通し、東京だけでなく、新潟、京都、大阪、名古屋、福岡等、日本全国を飛び回り、クライアントと膝を突き合わせ、WEBコンサルティングを行うスタイルを得意とする。世界へボカンブログで海外WEBマーケティングに関する記事を執筆している。